確率の応用|運と意思決定(確率シリーズ 第7章)

運と意思決定

モンティ・ホール、誕生日問題、ギャンブラーの誤謬、破産確率、生存者バイアス。確率で運と付き合うための実践編です。

世の中の半分くらいは運でできてる。だからこそ、運の"正体"を知っておくと、判断がめちゃくちゃ強くなるよ!
✦✦クリーム色のニット姿で確率を説明する若い先生

1. 確率と、生きるための「運」

中級上級世の中は、実力と努力だけでなく、運の影響も大きく受けています。運は「どうにもならないもの」ではなく、確率として測り、付き合い方を工夫できるものです。このページでは、直感がだまされやすい有名な問題と、運を味方につける考え方を扱います。

※ここでの話は数学の考え方の紹介で、投資やギャンブルをすすめるものではありません。

2. モンティ・ホール問題

3つのドアのうち1つに車、2つにはヤギがいます。あなたが1つ選ぶと、答えを知っている司会者が、残りのドアからハズレを1つ開けて見せます。ここで「ドアを変えてもいいですよ」と言われたら、変えるべきでしょうか。

最初に選んだドアが当たり:1/3(→変えるとハズレ)
最初に選んだドアがハズレ:2/3(→司会者はもう1つのハズレを開けるので、変えると必ず当たり)

よって変えると 2/3 で当たり。変えないと 1/3 のままです。

モンティ・ホールを1000回試そう

2つの作戦を試すと、勝率が表示されます。

3. 誕生日のパラドックス

何人集まれば、「同じ誕生日の2人」がいる確率が50%を超えるでしょう? 直感では180人くらい? 実際は23人です。余事象で計算します(うるう年は無視)。

全員の誕生日が違う確率 = 365/365 × 364/365 × 363/365 × … × (365−n+1)/365
n=23:≒ 0.493 → 誰か同じ ≒ 0.507

直感を裏切る理由は、比べる相手が「自分」ではなく「全員同士」だからです。23人なら組合せは ₂₃C₂=253組もあります。

何人で何%?

4. ギャンブラーの誤謬

コインで表が5回続きました。次は? 「そろそろ裏が出る」と思うのがギャンブラーの誤謬です。コインは過去を覚えていません。毎回独立なので、次に表が出る確率は1/2のままです。

5. 「稀なこと」は、機会が多ければ必ず起こる

100万分の1の確率のできごとが、100万回の機会にあれば、少なくとも1回起こる確率は?

1 − (1 − 1/1,000,000)^1,000,000 ≒ 1 − 1/e ≒ 0.632

約63%です。当せん確率が極端に低い宝くじでも、購入者全体では毎回誰かが当たります。「自分は当たらない」と「誰かが当たる」は両立します。ニュースで流れる奇跡的な偶然も、機会の総数が多ければ、どこかで必ず起きているのです。

6. 破産確率:資金と目標の関係

元手 a 円で、1回1円を賭け、目標 N 円に達するまで続ける(0円で破産)。毎回勝つ確率が p のとき、目標に到達できる確率は次のとおりです。

公平な賭け(p=1/2):目標に到達する確率 = a ÷ N

元手10円で目標100円なら、成功は10%。破産は90%です。

発展:不利な賭けのとき

勝つ確率が p、負ける確率が q、r = q/p とすると、目標に到達する確率は (1 − rᵃ) ÷ (1 − rᴺ)(p≠1/2)。たとえば p=0.47(ルーレットの赤黒とほぼ同じ)、a=10、N=20 なら約 23%。公平なら 50% のはずが、たった3ポイントの不利で半分以下に下がります。

破産シミュレーター

条件を決めて「挑戦」を押してね。

1円ずつ賭けるゲームを2000人分シミュレーションし、目標に届いた割合を理論値と比べます。

7. 期待値だけで決めない:リスクと保険

保険は、期待値では「保険会社が儲かる」ように作られています。それでも入る理由は、めったに来ない大損(破滅)を避ける価値があるからです。

選択平均最悪向いている場面
宝くじ(還元率およそ半分以下)マイナス購入額を失う「夢の代金」と割り切れる少額
火災保険・医療保険ややマイナスほぼなし起きると生活が壊れる損失
分散した長期投資プラス見込み(保証なし)一時的な大きな下落数十年単位で余裕資金を使う

ポイントは、「失っても立ち直れる額」で勝負することと、「失ったら終わる額」は賭けないことです。この考え方の数学的な形が、最終章のケリー基準です。

8. 生存者バイアス:見えていない失敗

1024人が、毎年コインの表裏を当てるゲームに挑戦し、外れた人は毎年退場します。10年後にどれくらい残るでしょう。

1024 × (1/2)¹⁰ = 1人

この1人は10年連続で当て続けた「達人」ですが、実力は全員同じ、ただの運です。成功者の話だけを聞くと、脱落した1023人の存在が見えず、「達人の秘訣」があるように錯覚します。

9. 「2倍」の落とし穴:相対と絶対

「この行動でリスクが2倍になる」と聞くと大ごとに思えますが、もとのリスクが0.001%なら、2倍でも0.002%。増えたのは0.001ポイントだけです。ニュースの数字に出会ったら、「もとの確率はいくつ?」を必ず確認しましょう。条件付き確率とベイズのベイズの定理と同じく、もとの割合(事前確率)が結論を決めます。

10. 運と付き合う7つのコツ

  1. 試行回数を増やす。当たる確率が低くても、機会を重ねれば1−(1−p)ⁿ は上がる。
  2. 破滅する賭けはしない。期待値がプラスでも、全財産を賭けるのは別問題。
  3. 独立な機会に分散する。ひとつの結果に人生を預けない。
  4. 期待値が正の選択肢を選ぶ。そして結果ではなく判断の質で振り返る。
  5. 「過去」ではなく「仕組み」を見る。連続して外れても、確率は変わっていない。
  6. 成功談の母数を想像する。見えている少数の裏に、多数の脱落者がいる。
  7. もとの割合を確認する。珍しいものを探すとき、陽性は大半が偽物になりうる。

11. 練習問題

  1. ドアが4枚(当たり1つ)のモンティ・ホール。最初に1枚選ぶ。司会者がハズレを1枚開けたあと、残り2枚のどちらかにランダムに変えたら当たる確率は?(変えない場合は?)
  2. 30人のクラスで、同じ誕生日の2人がいる確率は?(全員違う確率は約0.294)
  3. 公平なゲームで、元手20円から目標50円に到達する確率は?
  4. 1/10000の確率のくじを10000回引いたとき、少なくとも1回当たる確率は?
  5. コインで表が5回連続した。次に表が出る確率は?
答えと途中式を確認する

1:最初が当たり1/4。変えない場合は 1/4。最初がハズレ(3/4)のとき、残り2枚のうち当たりは1枚なので、ランダムに選ぶと1/2。変える場合:3/4 × 1/2 = 3/8。

2:1 − 0.294 = 約0.706(70.6%)。

3:20 ÷ 50 = 0.4(40%)。

4:1 − (1−1/10000)¹⁰⁰⁰⁰ ≒ 1 − 1/e ≒ 0.632。

5:1/2。過去の結果は影響しない。