数学B・C|大数の法則と正規分布(確率シリーズ 第6章)

大数の法則と正規分布

試行を重ねると何が起こるのか。大数の法則、正規分布、中心極限定理を、シミュレーションで「体験」してから理解します。

ちょっと難しそうな名前だけど大丈夫! 先に実験で見ちゃって、あとから理由を聞く順番だよ。
✦✦クリーム色のニット姿で確率を説明する若い先生

1. 大数の法則:回数を増やすと、割合は落ち着く

上級コインを10回投げて表が7回出ることは珍しくありません(割合70%)。でも1万回投げて7000回表が出たら、コインを疑うでしょう。

大数の法則:同じ試行を独立に繰り返すと、結果の平均(や割合)は、回数を増やすほど期待値(や確率)に近づいていく。

サイコロの目の平均が、回数とともに3.5に近づく様子を見てみましょう。

大数の法則を見よう

上:表の割合の推移(5本の線)。下:「表の回数 − 期待される回数」の推移。割合は近づくのに、回数の差は広がることがあるのに注目。

大数の法則は「借金を返してくれる」法則ではありません。表が10回続いた後に裏が増えて埋め合わせをするのではなく、その10回の偏りが、後の膨大な回数の中で薄まっていくだけです(運と意思決定)。

2. 山型の分布:正規分布

二項分布の n を大きくすると、棒グラフの輪郭はなめらかな左右対称の山になります。この山を正規分布(ガウス分布)といいます。平均 μ と標準偏差 σ の2つの数だけで形が決まる、統計学で最も重要な分布です。

正規分布と68-95-99.7平均から標準偏差の1倍以内に約68%、2倍以内に約95%、3倍以内に約99.7%が入る山型の曲線。μ−3σμ−2σμ−1σμμ+1σμ+2σμ+3σ約68%約95%±3σ以内で約99.7%

68 – 95 – 99.7 の目安:平均から ±1σ に約68%、±2σ に約95%、±3σ に約99.7% が入る。

コイン100回の表の回数は μ=50、σ=5 なので、約95%が40〜60回に入ります(正確には約96%)。60回以上表が出る確率は約2.8%で、「たまにある」程度です。

3. 標準化:ものさしを共通にする

値が平均から標準偏差何個分離れているかを表す数をz値(標準化)といいます。

z = (x − μ) ÷ σ
例題:テストの平均が60点、標準偏差が10点。80点のz値は (80−60)÷10=2。約95%が±2σに入るので、上位の約2.3%(=(100−95)÷2)です。

数学の80点と英語の75点、どちらが「上」かも、z値にすれば比べられます。

4. 中心極限定理:平均は必ず山型になる

次が、この章のクライマックスです。

中心極限定理:もとの分布がどんな形でも、独立なデータをたくさん平均する(または足す)と、その分布は正規分布に近づく。平均の標準偏差は σ ÷ √n になる。

もとの分布が偏った形でも、平均を取ると山型になります。実験で確かめましょう。

中心極限定理を体験しよう

n を1(もとの形)から大きくするにつれて、平均の分布が山型(正規分布)に変わり、ばらつきが小さくなる様子を見よう。

なぜ山型になるのでしょう。真ん中付近の値は「大きい値と小さい値の組み合わせ」が無数にあり、極端な値は「全部が大きい(小さい)」場合しかないからです。組合せの数の多さが山を作っています。反復試行と二項分布の二項分布が山になったのと同じ理由です。

5. 世論調査の「誤差±3%」の正体

1000人に「内閣を支持しますか」と聞き、40%が支持したとします。支持率の推定のばらつき(標準誤差)は次で計算できます。

√( p(1−p) ÷ n ) = √( 0.4×0.6 ÷ 1000 ) = √0.00024 ≒ 0.0155(1.55%)

約95%の範囲は±2倍で 約±3%。つまり真の支持率は約37〜43%と読めます。1000人で全国民の様子が分かるのは、中心極限定理のおかげです。誤差を半分の±1.5%にするには、人数を 4倍の4000人にする必要があります(√n の壁)。

読み飛ばし可:標準正規分布の値

標準正規分布(μ=0、σ=1)で、z以下になる確率 Φ(z) の代表値:Φ(0)=0.5、Φ(1)=0.8413、Φ(1.645)=0.95、Φ(1.96)=0.975、Φ(2)=0.9772、Φ(3)=0.99865。「95%の範囲は±2σ」は、正確には±1.96σ です。

6. 練習問題

  1. コインを100回投げたときの、表の回数の平均と標準偏差は?
  2. サイコロ1個の目の標準偏差は約1.71。100回投げた平均の標準偏差は?
  3. 平均60点、標準偏差10点のテストで、80点のz値と、おおよその上位割合は?
  4. 1000人調査で支持率40%。おおよその95%の範囲は?
  5. 「表が10回続いたから次は裏が出やすい」は正しい?
答えと途中式を確認する

1:平均 100×0.5=50、標準偏差 √(100×0.5×0.5)=5。

2:1.71 ÷ √100 = 0.171。

3:z = (80−60)÷10 = 2。上位約2.3%。

4:標準誤差 ≒ 1.55%、±2倍で約±3.1%。約36.9%〜43.1%。

5:正しくありません。毎回独立で、次に表が出る確率は1/2のままです。詳しくは次のページ。