大数の法則と正規分布
試行を重ねると何が起こるのか。大数の法則、正規分布、中心極限定理を、シミュレーションで「体験」してから理解します。

1. 大数の法則:回数を増やすと、割合は落ち着く
上級コインを10回投げて表が7回出ることは珍しくありません(割合70%)。でも1万回投げて7000回表が出たら、コインを疑うでしょう。
大数の法則:同じ試行を独立に繰り返すと、結果の平均(や割合)は、回数を増やすほど期待値(や確率)に近づいていく。
サイコロの目の平均が、回数とともに3.5に近づく様子を見てみましょう。
大数の法則を見よう
上:表の割合の推移(5本の線)。下:「表の回数 − 期待される回数」の推移。割合は近づくのに、回数の差は広がることがあるのに注目。
大数の法則は「借金を返してくれる」法則ではありません。表が10回続いた後に裏が増えて埋め合わせをするのではなく、その10回の偏りが、後の膨大な回数の中で薄まっていくだけです(運と意思決定)。
2. 山型の分布:正規分布
二項分布の n を大きくすると、棒グラフの輪郭はなめらかな左右対称の山になります。この山を正規分布(ガウス分布)といいます。平均 μ と標準偏差 σ の2つの数だけで形が決まる、統計学で最も重要な分布です。
68 – 95 – 99.7 の目安:平均から ±1σ に約68%、±2σ に約95%、±3σ に約99.7% が入る。
コイン100回の表の回数は μ=50、σ=5 なので、約95%が40〜60回に入ります(正確には約96%)。60回以上表が出る確率は約2.8%で、「たまにある」程度です。
3. 標準化:ものさしを共通にする
値が平均から標準偏差何個分離れているかを表す数をz値(標準化)といいます。
数学の80点と英語の75点、どちらが「上」かも、z値にすれば比べられます。
4. 中心極限定理:平均は必ず山型になる
次が、この章のクライマックスです。
中心極限定理:もとの分布がどんな形でも、独立なデータをたくさん平均する(または足す)と、その分布は正規分布に近づく。平均の標準偏差は σ ÷ √n になる。
もとの分布が偏った形でも、平均を取ると山型になります。実験で確かめましょう。
中心極限定理を体験しよう
n を1(もとの形)から大きくするにつれて、平均の分布が山型(正規分布)に変わり、ばらつきが小さくなる様子を見よう。
なぜ山型になるのでしょう。真ん中付近の値は「大きい値と小さい値の組み合わせ」が無数にあり、極端な値は「全部が大きい(小さい)」場合しかないからです。組合せの数の多さが山を作っています。反復試行と二項分布の二項分布が山になったのと同じ理由です。
5. 世論調査の「誤差±3%」の正体
1000人に「内閣を支持しますか」と聞き、40%が支持したとします。支持率の推定のばらつき(標準誤差)は次で計算できます。
約95%の範囲は±2倍で 約±3%。つまり真の支持率は約37〜43%と読めます。1000人で全国民の様子が分かるのは、中心極限定理のおかげです。誤差を半分の±1.5%にするには、人数を 4倍の4000人にする必要があります(√n の壁)。
標準正規分布(μ=0、σ=1)で、z以下になる確率 Φ(z) の代表値:Φ(0)=0.5、Φ(1)=0.8413、Φ(1.645)=0.95、Φ(1.96)=0.975、Φ(2)=0.9772、Φ(3)=0.99865。「95%の範囲は±2σ」は、正確には±1.96σ です。
6. 練習問題
- コインを100回投げたときの、表の回数の平均と標準偏差は?
- サイコロ1個の目の標準偏差は約1.71。100回投げた平均の標準偏差は?
- 平均60点、標準偏差10点のテストで、80点のz値と、おおよその上位割合は?
- 1000人調査で支持率40%。おおよその95%の範囲は?
- 「表が10回続いたから次は裏が出やすい」は正しい?
答えと途中式を確認する
1:平均 100×0.5=50、標準偏差 √(100×0.5×0.5)=5。
2:1.71 ÷ √100 = 0.171。
3:z = (80−60)÷10 = 2。上位約2.3%。
4:標準誤差 ≒ 1.55%、±2倍で約±3.1%。約36.9%〜43.1%。
5:正しくありません。毎回独立で、次に表が出る確率は1/2のままです。詳しくは次のページ。