数学A・B|期待値と分散(確率シリーズ 第5章)

期待値と分散

「平均していくら?」を表す期待値と、「どれくらい揺れる?」を表す分散・標準偏差。運とリスクを数字で語る道具です。

期待値は"長い目で見た姿"。でもその途中の荒れ方を測るのが分散なの。両方そろって初めて、賭けの中身が見えてくるよ!
✦✦クリーム色のニット姿で確率を説明する若い先生

1. 期待値:平均的にいくら?

中級ゲームを何度も遊んだとき、1回あたり平均していくらになるかが期待値です。サイコロの目の期待値を、100回振った平均から考えます。

各目が約1/6ずつ出ると考えると、平均は「値 × その確率」の合計です。

1×(1/6) + 2×(1/6) + … + 6×(1/6) = 21/6 = 3.5
E(X) = x₁p₁ + x₂p₂ + … + xₙpₙ

xᵢ は取りうる値、pᵢ はその確率。期待値は、実際に出る値とは限りません(サイコロで3.5は出ない)が、長い目で見た平均です。

2. お金のゲームで使う

例題:コインを投げて、表なら500円もらえ、裏なら300円払う。
E = 500 × 1/2 + (−300) × 1/2 = +100円

1回あたり平均+100円のゲームです。参加料が100円を超えるなら、長期的には損です。

例題(くじ):100本のくじに、1等1万円が1本、2等1000円が10本。
E = 10000×1/100 + 1000×10/100 + 0×89/100 = 100+100 = 200円

1枚150円で売るなら、買う側の期待損益は 200−150=+50円。ただし現実の宝くじは、期待値が購入額を下回る設計です。

3. 期待値の便利な性質

サイコロ2個の目の和の期待値は 3.5+3.5=7。前のページの表で7が真ん中だったことと合っています。

二項分布(成功確率p、n回)なら、1回あたりの成功回数の期待値が p なので、合計は E = n·p。ガチャ3%を100回引けば、平均3回当たります。

4. 期待値だけでは足りない:ばらつき

次の2つのゲームは、どちらも期待値が100円です。

ゲーム結果期待値
A確実に100円100円
B1/2で200円、1/2で0円100円

同じ期待値でも、Bは結果が大きく揺れます。この「揺れ」を測る数が分散と標準偏差です。

V(X) = E( (X − μ)² ) = E(X²) − μ² (μ = E(X))
標準偏差 σ = √V(X)

「平均からのずれ」を2乗して平均したものが分散、それを√で元の単位に戻したものが標準偏差です。

ゲームBの分散:平均からのずれは +100 と −100 で、どちらも2乗すると10000。
V = 10000×1/2 + 10000×1/2 = 10000、標準偏差 = 100円

ゲームAは分散0。同じ平均でも、Bは「平均±100円」ぶれる賭けだと数字で言えます。

サイコロの分散:E(X²) = (1+4+9+16+25+36)/6 = 91/6。
V = 91/6 − 3.5² = 91/6 − 49/4 = 35/12 ≒ 2.92、σ ≒ 1.71

5. 分散の性質と二項分布

6. 標準偏差の目安

ざっくり言えば、結果の多くは「平均 ± 標準偏差の2倍」の範囲に入ります(きれいな山型のとき約95%。詳しくは次章)。

コインを100回投げると、表の回数は平均50、標準偏差 √(100×0.5×0.5)=5。だから多くの場合40〜60回に収まります。「ちょうど50回」は約8%しかありませんが、「45〜55回」なら約73%です。

期待値プラスでも、揺れる:3つのゲームを遊ぼう

5人が同じゲームを遊んだ、累計損益の推移です。0円のラインより上にいる人が勝ち組。

7. 練習問題

  1. サイコロを振り、偶数なら目×100円もらい、奇数は0円。期待値は?
  2. 1/5の確率で1000円もらい、4/5の確率で200円払う。期待値は?
  3. コインを投げて表なら+3、裏なら−1。期待値、分散、標準偏差は?
  4. 成功確率0.3で100回挑戦する。成功回数の期待値、分散、標準偏差は?
  5. E(X)=5、V(X)=4 のとき、Y=3X−2 の期待値、分散、標準偏差は?
答えと途中式を確認する

1:(2+4+6)×100 ÷ 6 = 200円。

2:1000×1/5 − 200×4/5 = 200 − 160 = +40円。

3:E = 3×1/2 − 1×1/2 = 1。E(X²) = (9+1)/2 = 5。V = 5 − 1 = 4。σ = 2。

4:E = 100×0.3 = 30。V = 100×0.3×0.7 = 21。σ = √21 ≒ 4.58。

5:E(Y) = 3×5−2 = 13。V(Y) = 3²×4 = 36。σ = 6。