期待値と分散
「平均していくら?」を表す期待値と、「どれくらい揺れる?」を表す分散・標準偏差。運とリスクを数字で語る道具です。

1. 期待値:平均的にいくら?
中級ゲームを何度も遊んだとき、1回あたり平均していくらになるかが期待値です。サイコロの目の期待値を、100回振った平均から考えます。
各目が約1/6ずつ出ると考えると、平均は「値 × その確率」の合計です。
xᵢ は取りうる値、pᵢ はその確率。期待値は、実際に出る値とは限りません(サイコロで3.5は出ない)が、長い目で見た平均です。
2. お金のゲームで使う
1回あたり平均+100円のゲームです。参加料が100円を超えるなら、長期的には損です。
1枚150円で売るなら、買う側の期待損益は 200−150=+50円。ただし現実の宝くじは、期待値が購入額を下回る設計です。
3. 期待値の便利な性質
E(aX + b) = a·E(X) + b(値を2倍して10を足せば、平均も2倍して10足す)E(X + Y) = E(X) + E(Y)(独立でなくても成り立つ)
サイコロ2個の目の和の期待値は 3.5+3.5=7。前のページの表で7が真ん中だったことと合っています。
二項分布(成功確率p、n回)なら、1回あたりの成功回数の期待値が p なので、合計は E = n·p。ガチャ3%を100回引けば、平均3回当たります。
4. 期待値だけでは足りない:ばらつき
次の2つのゲームは、どちらも期待値が100円です。
| ゲーム | 結果 | 期待値 |
|---|---|---|
| A | 確実に100円 | 100円 |
| B | 1/2で200円、1/2で0円 | 100円 |
同じ期待値でも、Bは結果が大きく揺れます。この「揺れ」を測る数が分散と標準偏差です。
「平均からのずれ」を2乗して平均したものが分散、それを√で元の単位に戻したものが標準偏差です。
ゲームAは分散0。同じ平均でも、Bは「平均±100円」ぶれる賭けだと数字で言えます。
5. 分散の性質と二項分布
V(aX + b) = a²·V(X)(足す定数は分散に無関係。掛ける数は2乗で効く)- X と Y が独立なら
V(X+Y) = V(X) + V(Y) - 二項分布:
E = np、V = npq、標準偏差√(npq)
6. 標準偏差の目安
ざっくり言えば、結果の多くは「平均 ± 標準偏差の2倍」の範囲に入ります(きれいな山型のとき約95%。詳しくは次章)。
コインを100回投げると、表の回数は平均50、標準偏差 √(100×0.5×0.5)=5。だから多くの場合40〜60回に収まります。「ちょうど50回」は約8%しかありませんが、「45〜55回」なら約73%です。
期待値プラスでも、揺れる:3つのゲームを遊ぼう
5人が同じゲームを遊んだ、累計損益の推移です。0円のラインより上にいる人が勝ち組。
7. 練習問題
- サイコロを振り、偶数なら目×100円もらい、奇数は0円。期待値は?
- 1/5の確率で1000円もらい、4/5の確率で200円払う。期待値は?
- コインを投げて表なら+3、裏なら−1。期待値、分散、標準偏差は?
- 成功確率0.3で100回挑戦する。成功回数の期待値、分散、標準偏差は?
- E(X)=5、V(X)=4 のとき、Y=3X−2 の期待値、分散、標準偏差は?
答えと途中式を確認する
1:(2+4+6)×100 ÷ 6 = 200円。
2:1000×1/5 − 200×4/5 = 200 − 160 = +40円。
3:E = 3×1/2 − 1×1/2 = 1。E(X²) = (9+1)/2 = 5。V = 5 − 1 = 4。σ = 2。
4:E = 100×0.3 = 30。V = 100×0.3×0.7 = 21。σ = √21 ≒ 4.58。
5:E(Y) = 3×5−2 = 13。V(Y) = 3²×4 = 36。σ = 6。