数学A・B|条件付き確率(確率シリーズ 第4章)

条件付き確率とベイズの定理

「分かったこと」を使って確率を書き換える方法。検査の陽性問題を通して、情報から原因を推理する考え方を学びます。

ここが確率の一番おもしろいところ! 直感がひっくり返る体験、してみよ?
✦✦クリーム色のニット姿で確率を説明する若い先生

1. 情報が増えると、確率が変わる

中級サイコロを振って、隠れて見えない目について考えます。

何も分からないとき:6の目である確率 = 1/6
「偶数だ」と教えてもらったとき:2、4、6 の3つだけが候補 → 6の目である確率 = 1/3

「Aだと分かった」という条件のもとでBが起こる確率を条件付き確率といい、P(B|A) と書きます。分母を「全体」から「Aが起こった場合だけ」に切り替えるのがポイントです。

P(B|A) = P(A∩B) ÷ P(A)

「Aのうち、Bでもあるもの」の割合です。

2. 乗法定理:条件付き確率の使い道

上の式を変形すると、「AかつB」の確率が出せます。

P(A∩B) = P(A) × P(B|A)
例題:赤玉3個、白玉2個の袋から、戻さずに2個引く。2個とも赤の確率。
1個目が赤:P(A) = 3/5
1個目が赤のとき、残りは赤2・白2:P(B|A) = 2/4
P(A∩B) = 3/5 × 2/4 = 3/10

独立のときは、Aの結果がBに影響しないので P(B|A) = P(B) になり、掛け算の公式に戻ります。

3. 全確率の公式:場合分けして合計

結果Bが、原因A(またはA以外)のどちらかから起こるとき、場合分けして足します。

P(B) = P(A)·P(B|A) + P(Ā)·P(B|Ā)
例:雨の日は30%。雨の日の遅刻率は20%、それ以外は5%。
P(遅刻) = 0.3×0.2 + 0.7×0.05 = 0.06 + 0.035 = 0.095

4. ベイズの定理:原因をさかのぼる

遅刻したと分かったとき、「雨だった」確率はどれくらいでしょう? 結果から原因の確率を逆算するのがベイズの定理です。

P(A|B) = P(B|A) × P(A) ÷ P(B)

分母の P(B) には、上の全確率の公式を使います。

P(雨|遅刻) = (0.2 × 0.3) ÷ 0.095 = 0.06 ÷ 0.095 = 12/19 ≒ 0.63

雨の確率は30%でしたが、遅刻したと分かると約63%に上がりました。証拠を得て、確率を更新したのです。

5. 有名な落とし穴:陽性でも病気とは限らない

ある病気の有病率は1%。検査は、病気の人を90%陽性にし、健康な人も9%は誤って陽性にします。陽性が出たとき、本当に病気である確率は?

直感では「90%くらい」と答えたくなります。1000人で数えてみましょう(自然頻度で考える方法)。

陽性陰性合計
病気(1%)9人1人10人
健康(99%)89人901人990人
合計98人902人1000人
陽性98人のうち本当に病気は9人 → 9/98 ≒ 9%

正確には 0.009 ÷ (0.009+0.0891) = 約9.2%。健康な人が圧倒的に多いので、誤って陽性になる人の数が、本当の患者の数を上回ってしまうのです。

陽性の確率を実験しよう



10,000人で数えています。有病率を上げる/偽陽性率を下げると、陽性の中の本物の割合がどう変わるか見てみよう。

6. 例題:不良品はどの工場から?

例題:部品の60%は工場A(不良率2%)、40%は工場B(不良率5%)で作られる。不良品が1個見つかったとき、それが工場Aの製品である確率は?
Aで不良:0.6 × 0.02 = 0.012
Bで不良:0.4 × 0.05 = 0.020
P(A|不良) = 0.012 ÷ (0.012+0.020) = 0.375

Aの部品が多くても、Bの方が不良率が高いので、不良品の6割超はBから来ています。

7. 練習問題

  1. サイコロを振って、奇数だと分かった。3以上である確率は?
  2. 赤玉3個、白玉2個から戻さずに2回引く。1回目が赤だったとき、2回目も赤の確率は?
  3. 雨の日30%、雨のとき遅刻20%、雨でないとき遅刻5%。遅刻したとき、雨だった確率は?
  4. 有病率0.5%、感度99%、偽陽性率5%の検査で陽性が出た。本当に病気の確率は?
  5. P(A)=0.5、P(B|A)=0.6、P(B|Ā)=0.2 のとき、P(A|B) は?
答えと途中式を確認する

1:奇数は1、3、5の3つ。そのうち3以上は3、5の2つ。2/3。

2:残りは赤2・白2の4個。2/4 = 1/2。

3:0.06 ÷ (0.06+0.035) = 12/19 ≒ 0.63。

4:0.005×0.99 = 0.00495、0.995×0.05 = 0.04975。0.00495 ÷ 0.0547 ≒ 0.09(約9%)。

5:分子 0.5×0.6 = 0.3。分母 0.3+0.5×0.2 = 0.4。0.3 ÷ 0.4 = 0.75。