反復試行と二項分布
同じ試行を何度も繰り返すときの確率。「ちょうどk回」を求める公式と、山型の分布の正体を見ていきます。

1. 同じことを何回も繰り返す
中級コインを何回も投げる、ガチャを何十回も引く、打者が何打席も立つ。「同じ条件で、毎回独立に」繰り返す試行を反復試行といいます。
コインを3回投げて、表がちょうど2回になる確率を考えてみましょう。
「何通りあるか」×「1通りの確率」の形になっています。これを一般化します。
2. 反復試行の公式
1回の試行で成功する確率を p、失敗する確率を q = 1−p とします。n回のうちちょうどk回成功する確率は次のとおりです。
- ₙCₖ:n回のうち、どのk回が成功かを選ぶ方法の数
- pᵏ:選んだk回が成功する確率(独立なので掛け算)
- qⁿ⁻ᵏ:残りのn−k回が失敗する確率
約16%。6の目が「1回も出ない」確率 (5/6)⁵ ≒ 40.2% の方が高いです。
3. 分布:k回の確率を全部並べる
コインを4回投げたときの、表の回数ごとの確率です。
| 表の回数 k | 0 | 1 | 2 | 3 | 4 | 合計 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| ₙCₖ | 1 | 4 | 6 | 4 | 1 | 16 |
| 確率 | 1/16 | 4/16 | 6/16 | 4/16 | 1/16 | 1 |
ₙCₖ の並びは、前のページで見たパスカルの三角形の行そのものです。「ちょうど半分」が一番多く、両端は少ない山型になります。このような確率の並びを二項分布といいます。
二項定理 (p+q)ⁿ = Σ ₙCₖ pᵏ qⁿ⁻ᵏ の右辺が全部の確率の合計です。左辺は (p+q)ⁿ = 1ⁿ = 1。「二項分布」という名前は、二項定理の展開の各項がそのまま確率になっているからです。
二項分布を実験しよう
「n回のうち成功した回数」を人数分くり返し、その割合を理論値(緑)と比べます。
4. 「少なくとも1回」の威力:ガチャの真実
当たり確率3%のガチャを引き続けたとき、少なくとも1回当たる確率は、余事象を使って計算できます。
| 引く回数 n | 10 | 23 | 34 | 50 | 100 | 200 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 当たる確率 | 26.3% | 50.4% | 64.5% | 78.2% | 95.2% | 99.8% |
「確率3%なら約33回で当たるはず」と思いがちですが、33回引いても当たらない確率は 0.97³³ ≒ 36.6% もあります。期待される回数と、実際に当たる確率は別物です。半分を超えるのは23回目からです。
5. 例題
約26%。打率3割の打者でも、4打席で1本も打てない確率は 0.7⁴ ≒ 24% あります。
使える条件:① 毎回の成功確率が同じ ② 各回が独立。くじを「戻さずに」引く場合は確率が毎回変わるので使えません(それは組合せの計算です)。
6. 練習問題
- コインを5回投げて、表がちょうど3回出る確率は?
- サイコロを4回振って、1の目がちょうど1回出る確率は?
- 成功率0.2の挑戦を5回行う。少なくとも1回成功する確率は?
- ○×問題8問を、すべて当てずっぽうで答える。ちょうど6問正解する確率は?
- 1試合あたりの勝率が0.6のチームが、3戦2勝先取で勝つ確率は?(引き分けなし)
答えと途中式を確認する
1:₅C₃ × (1/2)⁵ = 10/32 = 5/16。
2:₄C₁ × (1/6) × (5/6)³ = 4 × 125/1296 = 125/324 ≒ 0.386。
3:1 − 0.8⁵ = 1 − 0.32768 = 0.67232。
4:₈C₆ × (1/2)⁸ = 28/256 = 7/64 ≒ 0.109。
5:2連勝:0.6² = 0.36。2勝1敗(最後は勝ち):最初の2試合で1勝1敗が2通り、その後勝つ → 2 × 0.6 × 0.4 × 0.6 = 0.288。合計 0.648。